御先祖様の鼻くそ黙示録

鼻くそのように生きた感想を記す

映画『ゴーン・ガール』、あまりにも絶賛されすぎでは?

 さきほどタマフルを聞いてたら『ゴーン・ガール』評をやってて宇多丸さんにもかなり絶賛されてました。リスナー評でも9割が好評価らしいのですが、正直そこまでかな?と思ったので少し。

 

 いや面白いですよ、間違いなく。原作を読んでいた自分としても面白かったです。

 ただ、自分が問題だと思うのはエイミーの描き方。タマフル内でも「女こええ!」とか言ってたのですが、自分はそうは思えませんでした。

 なぜならエイミーが自分の感情を操りすぎていて人間ではないように見えてしまうから。原作では終盤、エイミーは本気でニックが恋しくなります。ニックがテレビのインタビュー番組で謝罪している(ふり)のを見て、もとに戻れば幸せになれるのではと思うのです。本気で。要は自分の感情に振り回されるのです。

 ただ映画版はどうでしょう。原作では自分の中にある感情に振り回されるように家に帰ったエイミーが、その感情をコントロールしきっているようにみえてしまうのです。正確には、インタビューのところで心動いている様子が少し描写されるのですが、そこを広げていかない。その後の心理描写とのつながりに欠ける。んでこれによって「女こええ!」要素が削がれているように感じます。なぜなら人間としての実在感がないから。あれほどの用意周到さを持っていた女が、一時の感情に振り回されるところにリアリティは生じるのです。

 まあ、映画版は最終盤のテーマ性を際だたせるためにそのへんを削いだ気がしないでもないのですが、それによって失われているものもあるよねっていうはなし。

 なんだか原作厨みたいな話になってしまいましたが、そこまで原作が好きでもないんです。「イヤミス」との評価に惹かれて3月くらいに読みましたが、絶賛するまではいかないかなって感じでした。イヤな気分要素でいえば、『ちーちゃん』をはじめ、阿部共実の作品群のほうがもっとグロテスクでえげつないものを描いているように感じました。相変わらず阿部共実の話ばかりしてバカみたいだけど。

 映画版と原作、どちらが良いと感じたかというと、まあ、映画版かな?ベン・アフレックの腹がいいよ。でっぷりと。

 フィンチャー作品の中で最高では?との話もありますが、やはり『セブン』と『ファイトクラブ』は素晴らしいですよ。かなりいいけどそこまでじゃない。

 というわけで絶賛ムードに水を差してやろうという性悪エントリでした。

 あ、あと『インターステラー』は大変に素晴らしかったのですが、個別に記事を書く時間もないし、感想もまとまりきらないので年末にアップするであろうなんでもランキングベスト20の記事の中で少し触れます。